金融庁は、昨年12月に「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会」を設置し、株式新規上場に係る監査事務所の選任等に関する問題につき、「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会」報告書を昨日公表しました。
当該報告書の中では、IPOを目指す企業に対し、質の高い監査が安定的に提供されるための環境を整備するため、監査法人、証券会社、ベンチャーキャピタル、取引所などの関係者に対して、それぞれの取り組みを提言するとともに、IPOを目指す企業に対して、以下を期待しています。
・新規、成長企業は、その成長ステージに応じて、必要な内部管理体制を適切に構築していくことが重要であり、経営者は、専門的知見を有する公認会計士を積極的に活用していくことが望まれる。
・今後、多数の投資家の投資対象となる上場企業として、必要な内部管理体制を構築した上で、企業情報の適切な開示等を通じ、投資家から集めた資金をどのように活用して事業を行なっているかについての説明責任(アカウンタビリティ)を将来にわたり継続的に果たしていく責務を負うことの認識を深めていくことが重要である。
・上場準備期間の監査や証券会社の引受審査は、単なる数字や形式のチェックではなく、経営者の資質、企業カルチャーも含めた企業経営の健全性、事業内容等を独立第三者の立場で検証し、将来にわたって投資家の期待に応えられる企業となるための土台を固める重要なプロセスであるとの理解の共有が重要である。
・その目指す成長スピードを実現しつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上が図られるよう、監査法人や証券会社との対話を深め、上場準備その他の必要な対応を図っていくことが求められる。
・今後、IPOを目指す企業においては、 (ⅰ)監査法人の限られたリソースを有効活用すべく、決算期を現行の多くの上場企業と異なる時期とする、(ⅱ)決算期から株主総会までの期間を見直し、有価証券報告書を株主総会前に提出することにより、株主・投資家に対する情報提供の一層の充実を図る。
直近では、新型コロナウイルスの影響により、上場延期や取りやめ、公募価格割れが相次いでおり、外部市場環境は悪いですが、上記事項は、社内の内部管理体制や経営者の姿勢を問うていますので、これから上場される企業様におかれましては、是非ご覧になられてください。
「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会」報告書