当初予想でありました新規業務停止期間6ヶ月ではなく3ヶ月にはなりそうですが、課徴金20億と業務改善命令も併せて課されるということで、この度の不正会計は監査業界にとって大変影響が大きいものとなりました。
当方の予測でも、不正の額が大きいということと、カネボウと同様の組織ぐるみでの不正等ということで、オリンパスの時(業務改善命令)よりも重い処分が下されるということは間違いないとは思っておりましたが(詳細は、このブログを参照)、先日の公認会計士監査審査会からの処分勧告文を見てみると、地方事務所も含めた新日本の監査手続、不正対応、及び審査体制について、極めて酷い内容の文面になっておりましたので、今回の命令は致し方ないものと思われます。

当方も新日本に所属をしていたことや、また現在でも監査を行っておりますので、今回の不正の顛末については非常に関心を持っておりましたが、公認会計士の監査というものは、利益が出ておれば、監査の重要性の基準値は大きくなりますので、それだけ許容される誤謬額も大きくなることや、東芝のようなビッグクライアントについては当然監査法人内での専属チームがあり、従来から踏襲してきたチーム内だけでの監査に対する考え方もあるかとは思いますが、公表された第三者調査委員会の報告書を見る限り、多数ある不正項目の中にも新日本の監査が本当に機能していたのかを疑うような箇所がちらほら見受けられたのも、残念ではありますが事実です。

今回の新日本への処分の影響が、今後の監査実務に影響を及ぼすことは必至であり、より厳密で形式的な監査運営が金融庁から要求されることは容易に想像がつき、また、判断がグレーな会計監査論点については厳格な対応をせざるを得なくなるかもしれません。

しかし、その監査を実施する側の報酬が関与先から頂いている時点で独立性はほぼ失われており、おまけに監査関与期間が長く続けば続くほど、関与先との馴れ合いも当然に生じてくることも事実であるかと思いますので、投資家保護を掲げ、真に監査を価値あるものにするためには、監査制度の根幹を変える必要があるものと思います。その中で例えば、欧州のような監査のローテンション化も今後は導入されてくるのかも知れません。
ただ単に、形式的な監査をさらに要求されるだけでは、最近の監査現場の人員不足も含めて、効果的な監査は期待できないと考えます。

以下、本日の日経記事を引用いたします。
東芝の会計不祥事を巡り金融庁は18日、会計監査を担当した新日本監査法人に行政処分として新規営業などの業務停止を命じる方向で最終調整に入った。期間は3カ月。合わせて監査法人に対して初となる課徴金20億円を科す方針。新日本監査法人の英(はなぶさ)公一理事長(57)は責任を取って辞任する見通しだ。新日本は上場企業約1000社の監査を担う国内最大手。


東芝が水増しした利益は総額2248億円に上り、歴代3社長が辞任する不祥事に発展した。金融庁は新日本が会計監査を通じ長年不祥事を見抜けなかった責任は大きいと判断。新規業務停止、課徴金に業務改善命令を加えた処分を下す。

大手の監査法人に対する処分としては、2006年に旧中央青山監査法人が受けた全面的な業務停止命令に次ぐ重い処分となる。

特に監査法人への課徴金処分は初めてとなる。カネボウの粉飾決算を受け、08年の改正公認会計士法で導入されたが、今まで実際に科せられた事例はない。新日本の監査体制について、金融庁とともに検査した公認会計士・監査審査会は「多数の異常値を把握していたのに実証手続きをしていなかった」(幹部)と指摘している。

東芝問題を巡っては、証券取引等監視委員会が過去最大となる73億円の課徴金処分を勧告。17日に東芝は処分を受け入れると表明した。監査を担当した新日本への行政処分が決まることで、東芝の会計不祥事は一つの節目を迎える。監視委が検察と協議したうえで、東芝の旧経営陣の刑事告発に踏み切るかが焦点となる。