.任意適用会社の免除規定利用状況とその考察

以下の表では、国内のIFRSの先行適用企業がIFRS1を適用する際に利用した免除規定を、わかる範囲で簡単に取り纏めてみました(下記のイメージをご確認下さい)。

image002

これに対して、欧州企業IFRS初度適用時のIFRS1の免除規定の利用については、ICAEWThe Institute of Chartered Accounting in England and Wales:イングランド・ウェールズ勅許会計士協会)からの調査報告がありまして、みなし原価については、そこそこの会社が利用をしており、企業結合はほとんどの会社が利用、従業員給付・累積換算差額・株式報酬・複合金融商品については、全ての調査対象会社が利用をしていたようです。



国内の先行適用企業の免除規定の利用をみるに、個人的には初度適用には固定資産に係るみなし原価の利用の検討をもっとすべきではないかと考えています。現在、グループの会計方針の統一や期間損益の適正化、設備の使用状況の平準化等の観点より、国内でも機械や工具器具備品等の償却方法を定率法から定額法に変更、かつ、付随して耐用年数の見積りを変更してきている企業様が増えてきていますが、これらは将来のIFRS導入に係る負担(IFRSでは償却資産の費消パターンが実態と異なる際には、原則的に減価償却計算の遡及計算が必要)や影響(有形固定資産の計上額が多い企業様については、特にインパクトが大きい)を出来るだけ回避する目的があるように思われます(なお、利益剰余金の増加による自己資本の回復目的等もあるかと思います)。

この点、みなし原価を利用することで、そのような負担が大きいために、従前の会計基準による減価償却計算の遡及計算することなく、IFRS移行日時点での有形固定資産の公正価値で計上することができ、以降は妥当な償却方法に変更して、償却計算を実施することが可能となりますので、実務上の影響等を鑑みるならば、IFRS導入時に当該免除規定を利用することも十分に検討をする必要があるといえます。

最近、J-IFRSというIFRSではない日本版IFRSというものがASBJで今後1年をめどに策定されることが決定されましたが、J-IFRSIFRSの基準を自国に適応するために、エンドースすることになりますので、これはIFRSではありません。従いまして、有価証券報告書等にIFRSに準拠しているという明示的かつ無限定の記述を行うことは出来ませんので、J-IFRSを採用する企業様は初度適用企業とはみなされないことになり、IFRS1を適用することはできないことに十分留意をする必要があります。



以上、今回はIFRS1の免除規定について、簡単に学習をしてきました。IFRSの導入については、自社の会計方針を包括的かつ網羅的に再考することができ、さらに企業グループの中長期的なビジョンを踏まえての最適な会計方針や業務を検討できる唯一といってもないビッグイベントであると考えております。従って、確かにIFRSを導入することはコストも時間もリソースも投資することになるかと思いますが、自社のさらなる発展のための投資とお考え頂ければ、その導入過程で見出した企業様の課題は恐らく今までにもあった課題と重複するところも多いかと思いますので、それに対する効果的な解決策により解決していくことで、企業様の今後のさらなる飛躍が実現するものと信じております。


詳しくは下記、福武公認会計士事務所まで問い合わせを宜しくお願いいたします。
http://www.fukutakecpa.com/contact.html