上記のような減損の客観的証拠があった場合、IAS39では以下の3通りに分けて会計処理を規定しています。
・売却可能金融資産
従前その他包括利益として資本の部に計上されていた公正価値評価に基づく累積損失がある場合には、当該損失を当期損益で認識する必要があります。この点、売却可能金融資産が持分金商品の場合には、いったん認識された減損損失の戻入れは認められていませんが、負債性商品の減損損失については、戻入れの可能性はあります。
・償却原価で計上されている金融資産
当該資産の帳簿価額を、修正見積将来キャッシュ・フローを当該金融資産の当初の実効金利で割り引いた現在価値まで減額し、当該損失を当期損益で認識する必要があります。この点、減損後の期間において、減損損失の額が減少し、その減少が減損認識後に生じた事象(例えば、債務者の格付けの改善等)と客観的に関連付けることができる場合には、減損損失を戻入れる必要があります。
・取得原価で計上されている金融資産
当該資産の帳簿価額を、見積将来キャッシュ・フローを類似する金融資産の現在市場利回りで割り引いた現在価値まで減額する必要があります。この点、取得原価で計上されている金融資産に係る減損損失の戻入れは認められていません。
以上、今回は金融資産・負債の分類と認識、認識の中止、再分類及び減損までを簡単に学習しました。この点、ご存じの通り、現在IASBによりIFRS第9号「金融商品」が公表され、2013年1月1日以後開始する年次期間より適用されることになっています。同基準は、金融資産の分類及び測定について新しい基準を規定していますが、それ以外(主に、金融負債の分類及び測定、金融商品の認識の中止、減損等)については、金融負債に関する公開草案の提案内容に一部懸念事項が表明されたことにより、今回のIFRS第9号には含まれておりません。上記内容は、最終的には同基準に追加される予定でありますので、その後に改定IFRS第9号を学習していきたいと考えております。次回は、IFRS第7号「金融商品の開示」を簡単に学習していきたいと思います。