1021日、第5回社会福祉法人の財務規律の向上に係る検討会が開催され、(1)控除対象財産、(2)社会福祉充実計画、(3)社会福祉法人における「契約ルール」及び「調査研究」について、検討が行われました。

 

本検討会では、これまでの検討を踏まえ、再投下対象財産(社会福祉充実残額から社会福祉充実財産に呼称変更)は、法人が社会福祉充実計画を策定することにより、その使途を見える化するものであり、法人の自主的な経営判断のもと、社会福祉事業、地域公益事業、公益事業の順に柔軟な活用が可能であること、さらに①既存事業の充実または新規事業の開設のいずれにも充てることが可能であること、②社会福祉充実財産に加え、控除対象財産等を組み合わせて、事業を実施することも可能であること、③社会福祉充実財産は毎年度見直しを行い、当該財産額の変動に応じて使途の変更が可能であること等の方向性が示されました。

 

以下、当該検討会における協議内容となります。

(1)控除対象財産

社会福祉充実財産の算定式は以下の通りであり、今回の検討会での協議事項を赤字として、以下に詳細を記載しております

 

社会福祉充実財産(再投下対象財産)

活用可能な財産-

〔 控除対象財産①(社会福祉法に基づく事業に活用している不動産等)

+控除対象財産②(再生産に必要な財産)

+控除対象財産③(必要な運転資金)〕

 

※1 活用可能な財産

= 資産-負債-基本金-国庫補助金等特別積立金

※2 控除対象財産①(社会福祉法に基づく事業に活用している不動産等

財産目録により特定した事業対象不動産等に係る貸借対照表価額の合計額○円-基本金-国庫補助金等特別積立金-対応負債

※3 控除対象財産②(再生産に必要な財産)

【将来の建替に必要な費用】

(現在の建物に係る減価償却累計額○円×建設単価等上昇率○.○)×一般的な自己資金比率○%

【建替までの間の大規模修繕に必要な費用】

(現在の建物に係る減価償却累計額○円×一般的な大規模修繕費用割合20%)-過去の修繕額○円

【設備・車両等の更新に必要な費用】

減価償却の対象となる固定資産(10万円以上)に係る減価償却累計額の合計額

※4 控除対象財産③(必要な運転資金)

年間事業活動支出の3月分

 

1.  控除対象財産について

(1)       「社会福祉法に基づく事業に活用している不動産等」の算定のメルクマール

社会福祉法に基づく事業に活用している不動産は控除対象財産となりますが、その判別について、算定のメルクマールが示されました。

具体的には、貸借対照表上の資産の区分に応じ、考え方が示されており、◎は控除対象となるもの、-は控除対象とはならないもの、○は具体的な財産の内容により控除対象となり得るものとされています。

 

控除対象資産メルクマール(revised)

(2)       財産目録の様式の見直し

財産目録上、財産の種類ごとに、控除対象の該当の有無が明らかとなるよう、財産目録の様式を見直すこととされました。

 

(3)       対応負債の計算方法について

今回の検討会では、対応負債は以下4つの科目に決められ、より簡便な対応負債の計算方法が示されました。

1年以内返済予定設備資金借入金

1年以内返済予定リース債務

・設備資金借入金

・リース債務

 
2.   控除対象財産②について

(1)       建設時の自己資金比率が高い施設の取扱いについて

仮置きながらも、一般的自己資金比率は15%を想定しつつ、建設時の自己資金比率が一般的自己資金比率を上回る場合については、福祉医療機構の融資実績等に基づく90%点の上限(35%)として、各施設の建設時の自己資金比率をそのまま適用することも案とされました。

 

(2)       建設費・建物仕様の向上について

再生産に必要な費用の算定にあたり、建設費・建物仕様の向上に係る費用を見込むにあたっては、a.建設工事費デフレーターにより見込む方法、b.建設時の1㎡当たりの建設費用と標準的な1㎡当たりの建設費用を比較する方法、c. 建設時の店員1人当たりの建設費用と標準的な店員1名当たりの建設費用を比較する方法が示され、a.を基本としつつ、各法人における建設時の1㎡当たり建設単価と直近5年間の1㎡当たり建設単価を比較した伸び率とのいずれか高い割合を適用することとされました。


3.   控除対象財産③について 

(1)       「必要な運転資金」の範囲について

これまで、「年間事業活動支出の1月分+事業未収金」とされていたところ、「年間事業活動支出の3月分」とされました。

4.   社会福祉充実計画について

(1)       計画の実施期間

計画については、原則、5年間の範囲で、毎年度の社会福祉充実財産の全額につき、一または複数の社会福祉充実事業を実施するための内容とされ、5年間で計画を終了することが困難であることにつき、合理的な理由がある場合には、その理由を計画上に明記したうえで、計画期間を最長10年まで延長することができることが再確認されました。

 

また、社会福祉充実財産の全額を計画期間内に活用することが困難であることにつき、合理的な理由がある場合(例えば、建物の建替を行った直後であって、最長10年間の計画期間では社会福祉充実財産を有効に活用できない場合等)には、例外的に、社会福祉充実財産の全額ではなく、その一定割合の活用を内容とする計画を策定することができるものとされました。

 

(2)       計画の変更手続

計画の記載内容の変更を行う場合には、軽微な変更を除き、所轄庁の承認が必要となり、軽微な変更の場合には届出で足りるとして、以下のように整理されました。

①承認事項

・新規事業の追加

・対象者や支援内容等の追加など事業内容の大幅な変更を行う場合

・事業実施年度や事業実施期間の変更を行う場合

・各年度の社会福祉充実財産が一定割合(20%超)を超えて増減する場合

②届出事項

・事業内容の大幅な変更は行わずに、事業規模や資金計画、事業費の変更を行う場合

・同一市町村内で事業実施地域の変更を行う場合

・同一年度内で事業実施期間の変更を行う場合

・法人の基本情報を変更する場合

 

5.   社会福祉法人における「契約ルール」及び「調査研究」について

(1)   契約ルール

手続き面の整備として重要な契約については、理事会決定による事前チェック、事後チェックとして契約内容の理事会報告や所轄庁監査等が実施されることで、適正かつ公正な支出管理が自律的に確保できる法人体制となることを前提に、かつ、会計監査人の設置法人か否かで、随意契約可能な金額が緩和されることが提案されました。

 

具体的には、会計監査人設置法人については、建築工事:20億円、建築技術・サービス:2億円、物品等:3000万円を上限に随意契約可能(但し、3社以上の相見積は必要)、会計監査人未設置法人については、法人の実態に応じて、1000万円以下契約につき、随意契約可能(但し、3社以上の相見積は必要)となっております。

(2)   調査研究

また、社会福祉法人における調査研究について、要件を満たす場合に限り、保有割合が2分の1を超えない範囲で、社会福祉に関する調査研究を行う企業の未公開株の保有を可能とする方向性が示されました。

 

検討会は今回で終了し、今後、厚生労働省から事務連絡が発出され、4月の施行に向けて準備が進められるようです(算定式に用いる各種係数については、別途実施している調査研究事業の結果などをふまえ、年内を目途に最終的に決定)。