. 非金融資産に係る評価の前提

非金融資産の公正価値は、その最有効使用に応じて、単独で使用した場合に得られる価値か、他の資産又は資産・負債との組合せで使用した場合に得られる価値のいずれかに基づいて測定されます。これを、資産の評価の前提と呼びます。

資産の最有効使用がその資産を単独で使用することである場合には、当該資産の公正価値はその前提に基づいて測定をします。一方で、非金融資産の最有効使用が、グループである他の資産との組合せ、又は他の資産・負債との組合せで使用することである場合には、当該資産の公正価値は、資産を売却する現在の取引において受取る価格となり、以下が前提とされています。

・市場参加者は、他の資産又は他の資産・負債とともに当該資産を使用すること

・それらの資産及び負債(相互補完的な資産及び関連する負債)を市場参加者が入手できること


IFRS13では、非金融資産の最有効使用に関する仮定は、当該資産が使用される資産グループ又は資産・負債グループの全てについて首尾一貫していなければならないとされています。すなわち、企業は、資産グループ内の全ての非金融資産が同じ最有効使用を前提として評価をすることになります。例えば、ある1組の資産を資産グループとして売却すると判断する場合には、当該グループにおける全ての非金融資産は、グループ内の個々の資産の価値が他の前提に基づく場合より高くなるかどうかに関わらず、同じ評価の前提(同じ最有効使用の前提)に基づいて評価をすることになります。それゆえ、会計単位(個々の資産として使用)としての評価と、評価の前提(資産グループとしての使用)に基づく評価単位で、その最有効使用が異なる場面が生じてくる可能性があることに留意をする必要があります。


それでは、単独で使用している非金融資産についてどのように最有効使用を判定していくのかを、土地の設例で確認していきたいと思います。


【例題】

メイン業務が戸建住宅メーカである企業Xは、メイン事業とは関連がない物品を製造販売する目的で土地Aを工場用地として使用し、当該敷地には工場Bを建築し、使用している。この点、当該工場はかなり老朽化しており、経済的耐用年数はほぼ無いものとする。そして、当該土地の現在の用途は、市場又はその他の要因により異なる用途が示唆されない限り、通常は現状での用途使用が最有効使用であると推定される。

近年、土地Aが存している近隣地域が戸建住宅地として開発されてきており、当該宅地分譲開発を促進するような規制の緩和等もあり、付近の地域の市場参加者としては、当該土地Aの価格設定を行うにあたり、工場用地としてではなく、戸建住宅地として宅地分譲開発するディベロッパーが想定される可能性が非常に高いものとする。

この場合の当該土地Aの最有効使用は、以下の2通りの場合の価値を比較する必要があります。

①現在のように工業用地として開発した場合の土地の価値

②戸建住宅を宅地分譲するために、工場を解体し、それに伴う必要な諸費用等(工場取崩し費用、材料売買金額等)を考慮した更地としての土地の価値

仮に、①の公正価値500で、の公正価値が600であった場合には、当該土地Aの最有効使用は②になりますので、Aの上に存する工場は取り崩され、更地にするのが最も高い効用を有する使用方法ということになります。

但し、実務上、このような建物取崩して更地化とする使用法を最有効使用と判断する場合には、事業運営に係わる事項といえますので、当該判断は慎重に行う必要があるといえます。


 以上、今回はIFRS13の最有効使用の考え方をメインに、簡単に学習をしてきました。最有効使用の概念は、IFRSが非金融資産を公正価値で当初認識することを求めている場合(例えば、企業結合で取得した資産をIFRS3に従って認識する場合等)に特に重要になります。これは、取得企業が意図した資産の使用方法と、市場参加者が資産を使用するであろう方法が同じでないことがありうるからです。ですので、公正価値を測定する場合には、市場参加者の観点からの分析が必要不可欠であることを十分にご理解頂ければと思います。

次回は、引き続きIFRS13の測定の評価技法について簡単に学習をしていきたいと思います。

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