(2)かつ②の場合

Y社個別財務諸表】(USD)

借方)

貸方)

仕訳なし            

               

この場合も、親会社からのドル建長期借入金は期末時点では、Y社の個別財務諸表では換算されず、そのまま計上されます。


X社個別財務諸表作成上の期末換算】()

借方)

貸方)

長期貸付金           800

為替差益                800

この場合、X社の機能通貨は円ですので、個別財務諸表上、ドル建長期貸付金100ドルを機能通貨に換算する結果、800円の為替差益が計上されることになります。


【連結財務諸表作成上の相殺取引及び換算差額の振替】()

借方)

貸方)

長期借入金          9,000

長期貸付金                9,000

為替差益            800

その他包括利益               800

そして、Y社に対する長期貸付金が純投資の一部として指定された場合、子会社で損益が生じていないにも関わらず、連結財務諸表上では、当該貸付金は純投資の一部となりますので、親会社で計上した為替差益について、資本(その他包括利益)に振り替える必要があります。


このように、貸付が在外営業活動体に対する純投資の一部であるかどうか、また、貸付が円建であるか、ドル建であるかで、計上される損益や資本の金額が異なる可能性がございますので、グループ内賃借取引がある場合には、留意が必要になります。


. その他のグループ相殺取引

(1)配当について

子会社が親会社に配当を支払う場合、親会社は配当が宣言されたときの為替レートで配当を計上することになります。そして、当該宣言日と実際に配当を受領する日の間で為替レートが変動した場合には、換算差額が親会社の個別財務諸表上、損益として計上され、これは連結上でもそのまま損益として計上されることになります。


この点、配当が宣言されたのが年度末であれば、グループ会社間債権債務及び配当も連結手続として相殺消去され、換算差額も発生しないので、特に問題は生じませんが、例えば、配当の受領が翌期になってしまい、その間に為替レートが変動している場合には、通常のグループ内取引に係る換算差額と同様ですので、そのまま連結上も、損益として計上され、その他包括利益として認識されることはありません。それゆえ、グループ間での配当取引から損益が生じる可能性がありますので、違和感があるかもしれませんが、一旦子会社で配当宣言がなされますと、従前は子会社の純投資の一部であると考えられていた純資産が、親会社の機能通貨に換算されますので、親会社には為替リスクが生じていると考えれば、妥当な処理であるといえます。


(2)未実現損益について

IAS21では、グループ間の未実現損益の相殺消去に係る換算ついて、特に具体的な指針を示しておりません。しかし、未実現損益を計上するのは好ましくないことから、通常は物品等を販売した日における為替レートを用いて、販売側が付した損益を消去することになると思われます。


以上、今回は主にグループ取引に係る換算に焦点を絞り、日本基準と異なる部分について、簡単に学習をしてきました。外貨換算については、その他の論点としまして、平均レートの妥当性や初度適用の免除規定の適用(累積換算差額)等がありますので、詳細についてはまた機会を設けてご説明をしていきたいと考えております。それでは次回からは、IAS12号「法人所得税」について簡単に学習をしていきたいと思います。


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