それでは、給付額の帰属に関する例題をいくつか見ていきたいと思います。

【例題①】

ある年金制度では、各年度の勤務に対して、退職時給与の0.1%分の年金を毎月支給し、年金は65歳から支払われる場合の給付額はどのように帰属されるか。

 

(解説)

ここでは受給権の確定を制度で規程しておりませんので、給付額の測定に権利確定条件を満たさない確率を反映する必要はありません。それゆえ、予想退職日現在における、予想退職日から予想死亡日に渡り支払うべき見積退職時給与の0.1%分となる月額年金総額の現在価値に等しい給与額を、従業員が提供する勤務期間の各年度に帰属させることになります。

 

【例題②】

ある退職一時金制度では、2,000の一時給付を支払うが、これは20年間の勤務後に権利が確定する。当該制度では、その後勤務が提供されたとしても、2,000を超える給付は支給しないものとした場合、給付額はどのように帰属するか。この点、当該従業員が20年間の勤務を全うしない確率は10%とする。

 

(解説)

20年目以降に帰属させる給付はありませんので、当初の20年間の各年度に、100=2,000÷20)の給付を帰属させることになります。この点、本問では受給権の確定を制度で規程しておりますので、当該各年度の当期勤務費用に、従業員が20年間勤務を全うしない確率である10%を反映させる必要がある点に注意を要する必要があります。

 

最後にc)の保険数理上の仮定ですが、保険数値上の仮定とは、偏りがなく(慎重さを欠くものでなければ過度に保守的なものでもない)、互いに整合し、退職後給付を支給する最終的な費用を決定する変数についての事業主の最善の見積りであり、人口統計上の仮定(雇用中及び退職後の死亡率や従業員の退職、身体障害及び早期退職の比率等)と財務上の仮定(割引率、将来の給与及び給付水準、制度資産の期待収益等)から構成されます。この点、財務上の仮定である割引率についてですが、IAS19では、割引率には貨幣の時間的価値は反映させますが、保険数理上、投資のリスク及び企業固有の信用リスクを反映すべきではないとし、従業員への給付支払いの見積時期を反映させる必要があると規定しています。それゆえ、使用する割引率は、給付建債務の通貨と期間が整合します各期末の報告日現在の優良社債の市場利回りを参照して決定されることになります。

 

(b)制度資産(plan assets

給付建制度における制度資産には、長期従業員給付基金が保有している資産と適格な保険証券が含まれます。長期従業員給付基金が保有している資産とは、企業から法的に分離され、従業員給付の支払又は積立てを行うためだけに存在している事業体(又は基金)によって保有されている資産であり、それは従業員給付の支払い又は積立てをするためだけに利用可能なものであり、企業自身の債権者に対する弁済等のために利用することができず、通常企業には返還されないものをいいます。適格な保険証券とは、企業の関連当事者ではない保険会社が発行した保険証券で、当該保険証券の保険金が、給付建制度による従業員給付の支払い又は積立てのためだけに使用でき、企業自身の債権者に対する弁済等のために利用することができず、通常は企業に支払われない保険証券のことをいいます。IAS19では、制度資産は公正価値で測定するとしており、当該公正価値は、取引の知識がある自発的な当事者間で、独立第三者間取引条件により、資産が交換され、又は負債が決済される価額と定義されています。
 

以上、今回はIAS19号「従業員給付」で規定されている4種類の給付についての確認及び退職後給付制度について簡単に学習してきました。次回は引き続き同基準書で規定されています給付建制度の会計処理及びその他の従業員給付の会計処理を学習していきたいと思います。

 

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