さらに、③子会社、被共同支配企業又は関連会社からの配当を認識する場合として、子会社、被共同支配企業又は関連会社への投資に対して、配当を認識し、かつa)個別財務諸表における当該投資の帳簿価額が、連結財務諸表における被投資企業の関連するのれんを含む純資産の帳簿価額を超えている、又はb)受取配当の金額が、配当が決議された期における子会社、被共同支配企業又は関連会社の包括利益合計額を超えていることを挙げています。この点b)に関して、IFRSでは、子会社、被共同支配企業又は関連会社からの受取配当は、受取側では個別財務諸表上、配当を受取る権利が確定したときに、日本とは異なり包括利益として認識されますので、支払側の包括利益を超えるような配当の支払が有る場合には、減損の兆候として検討する必要があります。

 

以上のように、IAS36では、①から③の兆候例を列挙していますが、あくまでも上記は例示列挙であり、全ての減損の兆候を網羅している訳ではありませんので、この点注意を要する必要があります。このように、日本で減損の兆候として規定されている4つの場合と比較して、IAS36ではより広範囲に及ぶ減損の兆候を総合的に判断する必要があるといえます。

 

.減損テスト

資産が減損している兆候が存在する場合、資産の帳簿価額と回収可能価額を比較することにより減損テストを実施します。IAS36では、回収可能価額を以下のように定義しています。

The recoverable amount of an asset or a cashgenerating unit is the higher of its fair value less costs to sell and its value in use.

 

ここで、重要なキーワードはボールドした箇所である、売却費用控除後の公正価値と使用価値を比較してその価値が高い方が、回収可能価額になるということです。この点、売却費用控除後の公正価値は、通常独立第三者間取引条件による拘束力のある売買契約に基づく価格から、処分費用を控除したものであるとされますが、拘束力のある売買契約が存在しないが、資産が活発な市場で

取引がなされている場合には、処分費用を差し引いた当該資産の市場価格となります。

 

また、使用価値は、資産の継続的使用及び最終的な処分から発生する将来キャッシュ・インフロー及びアウトフローを見積り、それを適切な割引率で割引くことで算定されます。

この点、将来キャッシュ・フローの見積りについて、IAS36では以下の注意点を規定しています。

     当該資産の残存耐用年数に渡り存在する経営者の最善の見積りを反映するような合理的かつ裏付け可能な前提を基礎とすること。

     外部証拠により重点を置くこと。

     経営者によって承認された直近の財務予算・予測は、より長い期間を使用することが正当化できない限り、最長5年間とすること。

     予算・予測を超えた期間を超過した見積りは、原則一定又は逓減する成長率を使用したキャッシュ・フローで見積もること。

     成長率は、より高い成長率を正当化し得ない限り、市場の長期平均成長率を超えてはならない。

 

そして、将来キャッシュ・フローの見積りの構成要素の範囲として、IAS36では以下のように規定しています。

     当該資産の継続的使用によるキャッシュ・インフローの予測

     当該資産の継続的使用によるキャッシュ・インフローを発生させるために必然的に生じるキャッシュ・アウトフロー、かつ当該資産に直接帰属できるものの予測

     耐用年数終了時に資産の処分により、キャッシュの授受がある場合には、当該正味キャッシュ・フロー

しかし、財務活動からのキャッシュ・インフロー又はアウトフロー及び法人所得税の受取又は支払に伴うキャッシュ・インフロー又はアウトフローは、資産の使用から直接生じる将来キャッシュ・フローではありませんので、将来キャッシュ・フローの見積りには含められません。

 

また、適用する割引率については、IAS36では、貨幣の時間価値及び将来キャッシュ・フローの見積りが修正されていない固有のリスクを反映した税引前の利率である必要がありますが、実務上は、企業の加重平均資本コストを出発点として、資本構造や特定の資産又は事業部門に固有のリスク等を考慮して、その企業固有の割引率を算定する必要があります。

 

この点、日本では減損の兆候があった場合には、減損の存在が相当程度に確実であるか否かを確認するために、資産等から得られる特定期間の割引前将来キャッシュ・フローの総額と、当該資産等の帳簿価額とを比較することで減損の認識を判定する必要がありますが、IAS36では、日本のような減損の認識判定は実施せずに、資産の帳簿価額と回収可能価額を直接比較して、減損損失を認識する必要があるかどうかを判定する点に留意する必要があります。

 

判定後、当該資産の回収可能価額が帳簿価額より低い場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額する必要がありますが、減損損失の測定は、日本では認められていない減損損失の戻入れも含めて次回で学習していきたいと思います。


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